方程式のない市場で、事業はどう生まれるか——Rapid Dominance と Achieve Failure、Rubicon9の二つのエンジン
 
Rubicon9には「失敗を成し遂げよ」という行動原理を掲げた領域がある。
冗談ではなく、経営リソースを正式に割り当てている。
DEJIMA(出島)という。

二つの市場に、二つの原理

私たちは経営資源を、性質の異なる二つの市場へ意図的に振り分けている。
一つは、価値算定の方程式がすでに定まっている市場だ。テクノロジー戦略とDX支援、IT事業会社の市場展開支援、PEファンド投資先のバリューアップ支援がここにあたる。市場構造も成功要因もある程度見えている領域では、何を押さえれば勝てるかを見極め、速やかに優位を確立する。そして、自分がいなくても回るエコシステムを残して次へ移る。
この行動原理を Rapid Dominance と呼んでいる。
もう一つは、方程式そのものが存在しない市場である。社会課題、地域創生、まだ十分に事業化されてこなかった産業領域。成功事例を模倣することも、市場規模を正確に見積もることもできない。
ここに向き合うための実践フィールドが DEJIMA であり、行動原理は真逆になる。
Achieve Failure ――失敗を成し遂げる。
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売上を起点にしない

既存市場の事業開発はわかりやすい。顧客を分析し、競合を調べ、市場規模を算定し、仮説を立てて投資判断を下す。
形成途上市場では、その前提が丸ごと崩れる。受益者と支払者が一致しない。成果が出るまでに十年かかる。そもそも、誰に何をいくらで売るのかが決まっていない。こうした領域に、算定できる市場規模は存在しない。
売上や利益を起点にテーマを選べば、判断は必ず既存市場の延長線上へ収束する。合理的であろうとするほど、未知への挑戦は選ばれなくなる。
だからDEJIMAでは、起点を変える。社会ニーズと、自分自身の思いが重なる一点。そこから始める。
必要なのは、正解を探し当てる能力ではない。正解が存在しない状態で前に進む能力である。

DEJIMAという探索装置

DEJIMAは新規事業部門ではない。インキュベーション施設でもない。探索装置である。
いま、20以上のテーマが同時に動いている。魚養殖事業。地方創生。若者の就業力強化。宇宙スタートアップ支援。ファンド組成。そして、筋肉経営コミュニティ構築。出資を伴う事業化テーマから、プロボノ、ボランティア、メンバー主導の部活動まで、すべてが一枚の表の上に並んでいる。
たとえば、三つ。
陸上養殖では、ベルデアクア社と共に施設のスケールアウトを進めている。国内外へ拠点を広げる事業プランを共に描き、海外プレーヤーとの接続と国内の展開開拓を同時に走らせる。支援にとどまらず、R9自身が養殖事業者として立つ道も検討している。
地方創生では、一宮・稲沢を拠点とする一般社団法人タキドキと共に、地域を動かす施策を積み上げている。直近では、地元高校でのキャリア授業にR9の社員が講師として立つ。
若者の就業力強化では、一般社団法人ハッシャダイソーシャルとの連携と産学連携を軸に、突出した才能と知見を持つ若者をR9 Academyというインターンへ迎え入れる。そこで育った人材を、Rapid Dominance側で伴走しているIT事業者へつないでいく。
脈絡がないように見えるかもしれない。だが、この脈絡のなさこそが設計だ。
同じ業界の中だけで考えていれば、発想もまた業界の常識に閉じる。日常業務では出会わない人。接点のなかったコミュニティ。関心を持ってこなかった社会課題。新しい方程式の種は、そういう場所にしか落ちていない。そしてインクルーシブな人のところにこそ、おもしろいネタとおもしろい人が集まってくる。
方程式の定まっていない領域を探すのに、整った地図は役に立たない。

ただし、失敗なら何でもいいわけではない

誰も解いたことのない方程式は、成功事例を眺めていても見つからない。実際に挑み、仮説を外し、行動の結果として失敗する。その失敗の中にしか、ヒントは隠れていない。
ただし、あらゆる失敗に価値があるわけではない。意図をもって仮説を立て、速く安く外し、何を学んだかを言語化できた失敗だけが実践知になる。同じ失敗を二度するのは、単なる失敗だ。
だから、自由ではあるが放任ではない。各テーマに責任者を置き、戦略的価値と成果までの時間軸という二軸でポートフォリオとして俯瞰し、定期的に置き直している。伸ばすもの、加速するもの、畳むもの。撤退の判断を下せなければ、Achieve Failure はただのフェイルで終わる。
このような取組みが続かない理由の多くは、熱意の枯渇ではなく、評価軸の不在だ。
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二つのエンジンは、対立していない

仕上がった市場で稼ぐ力があるから、方程式のない市場に張れる。そして形成途上市場で得た実践知は、やがて仕上がった市場での提案の深さになって返ってくる。
Rapid Dominance と Achieve Failure は、別々の活動ではない。同じ一つの循環の、右回りと左回りである。

情熱が未来を照らす

私たちのタグラインだ。
正直に言えば、DEJIMAのテーマのうち何が実を結ぶかは分からない。それでいい。方程式の定まっていない市場に張るとは、そういうことだ。
必要なのは、社会ニーズと自分の思いが重なる一点を見つける嗅覚と、そこへ踏み込む情熱と勇気である。
門は開いている。飛び立つ者を支える。その挑戦者を常に求む。